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【ネタバレ注意】「相棒 劇場版Ⅳ」考察、感想。

投稿日:2017年2月15日 更新日:

 今年初の邦画は「相棒 劇場版Ⅳ」

 相棒シリーズはドラマは毎週欠かさず見ており、唯一見ているドラマといっても過言ではないほど。

 そんな相棒シリーズは、相棒が変わって初の劇場版!

 米沢さんや神戸くんも登場すると話題となっている今作はどのような展開になって何を訴えようとしたのか?

 ネタバレを含む記事になっているのでネタバレ厳禁の方はこちらから別記事を楽しんでください。

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あらすじ

※以下ネタバレ注意。

 

その未来(さき)には、なにがある?

 

 7年前、英国で日本大使館関係者の凄惨な集団毒殺事件が起こり、その唯一の生き残りだった少女が国際犯罪組織によって誘拐された。しかし、当時の駐英大使と日本政府は“高度な政治的判断”によんえ。その誘拐事件を闇に葬っていた――。

 それから7年。国際犯罪組織バーズのリーダー=レイブンを長年追ってきた国連犯罪情報事務局・元理事のマーク・リュウが、日本にレイブンが潜伏しているという情報を得て香港から来日。特命係の杉下右京と冠城亘は、社美彌子からの指示で、案内役としてそのリュウに同行していた。その矢先、リュウの部下が「天谷克則という男を調べてくれ」というメッセージを残し 首に黒い羽根のタトゥーを入れた“黒衣の男”に殺害された。

 外務省のホームページをハッキングした犯行グループは、7年前に誘拐した少女=鷺沢瑛里佳の現愛の姿を動画で公開した。「7年前、日本政府は我々の要求を無視した。今回拒否すれば、大勢の人々が見守る中で日本人の誇りが砕け散るだろう」というメッセージと約9億円の身代金を要求した。誘拐事件の全貌が明らかになって、騒然とするマスコミ。特命係の2人は捜査一課の面々、元鑑識の米沢守、警察庁の神戸尊を巻き込みながら、事件解決へと独自に動き出す。  事件のカギを握る“天谷克則”とはいったい何者なのか?“黒衣の男”の正体は国際犯罪組織バーズのリーダー=レイブンなのか?そして、事件の首謀者レイブンの本当の目的とは?日本中が歓喜に包まれた凱旋パレードの真っ只中、遂に杉下右京は真犯人を追い詰める! しかし、その先には誰も想像していなかった“真相”と“未来”が待ち受けていた――。

 

登場人物

・杉下右京(水谷豊)

警視庁特命係係長・警部

警視庁一の切れ者だが、真実を追求するあまり上層部に疎まれた窓際キャリア。

名推理で事件解決に挑む。

 

・冠城亘(反町隆史)

警視庁特命係巡査

元法務省キャリア官僚。飛ばされた警視庁でも、

広報課から念願の特命係への異動を、荒技で実現させた凄腕。

 

・マーク・リュウ(鹿賀丈史)

「国連犯罪情報事務局」元理事。

日本での案内役となった特命係と共に、レイブンを追う。

 

・鷺沢瑛里佳(山口まゆ)

在英日本大使館の参事官令嬢。

7年前、10歳のとき「バーズ」に誘拐され、行方不明に。

 

相関図はこちら。

 

・スタッフ等

監督:橋本一(相棒にはSeason2の第8話より参加)

脚本:太田愛(相棒にはSeason8の第2話より参加)


 

「相棒 劇場版Ⅳ」公式サイト

「裏相棒」公式サイト

 

まとめ

 この相棒劇場版Ⅳは毒物を気化させようとする手口からもわかるように2016年9月の設定である。Season15の13話と14話は2016年の2月を舞台としている(ちょうどSeason14の終盤のころの設定)

 相棒の劇場版は普段のドラマシリーズと異なりパラレルワールドということが「相棒 劇場版Ⅳ」パンフレットに記載されており、公式によって明言された。特命係のセットに1カ所いたずらが仕掛けられているそうだが、残念ながら正確には発見できなかった。(木札のこと?)

 

・毒物の密輸方法に関する考察

 今作ではタイでのテロ事件に巻き込まれた邦人の遺体に毒物を隠しいれて密輸するという手法が使われていた。そこで実際にどうなのかということを調べてみた。

 海外で死亡した場合に必要な書類は

・死亡診断書2通
  1通は領事館、1通は遺体処理する病院に提出する。
・遺体処理証明書
  エンバーミングを行った病院担当医の処理証明書を領事館に提出する。(エンバーミングとは遺体の長期保存を目的とした遺体処理のこと)
・梱包証明書
  棺の中に遺体以外入っていないことを調べた書類で、領事館員立会いの下、遺体の納棺梱包する。

 

 このような手続きが必要となり、タイでの死亡診断書に日本で葬儀の時に見た人が縫合が2度されていたといっていたので、死亡した後に毒物混入→死亡診断書作成→輸送→毒物回収から縫合→死亡診断書の疑問点に気づくという順番と考えられる。

 しかしこれには、死亡診断書作成時およびエンバーミング処理時に薬物に医師が気づかない。という条件が必要となる。(梱包時は遺体内部までは調べない?)

 また、遺体は貨物扱いとすることにされており、現実の場合、国別の取り扱い規定外国に遺体を移送する場合は、移送する国の最新の規則について領事館に相談する必要があるとされているので荷物検査が受けないということはないと思われる。

 人では事例が確認できなかったが犬を用いての薬物の密輸入は過去に例があるようだ。

 記事はこちら

 この記事には犬の体内にヘロインを隠しいれていたが摘発されたというものである。それも生きている犬に対して薬物を体内に忍ばせていたそうなので、非常に残虐で許し難い犯罪である。

 また、生きている人間が違法薬物を密輸入するときに飲み込むなどの方法はよくあるそうだ。

 

・トラック島について

 天谷克則が親を失ったのはトラック島空襲と考えられる。このトラック島空襲は1944年2月17日から18日に行われたもので日本側が阿賀野、那珂をはじめとする巡洋艦3、駆逐艦4、輸送船5、小型艇3、商船32、航空機270、地上での戦死400、陸兵の海没による戦死7000、トラック島全施設の壊滅等の被害を出して敗北した。防衛戦前の戦力は日本が側巡洋艦3、駆逐艦8、航空機159、保管機約200で、米側が空母9、戦艦,巡洋艦など45、航空機589といった物理で殴るというあの国がよくやる戦法で圧倒的に劣勢であった。

 劇場中でも描かれていた通り、トラック島は太平洋の荒波から環礁によって隔離された広大な内海という泊地能力の高さから“日本の真珠湾”ないし“太平洋のジブラルタル”とも呼ばれ、日本海軍の一大拠点が建設された。この大環礁を基地化したことで、海軍は予想艦隊決戦海域を小笠原沖からマリアナ沖へと前進させるなど、基本戦略に大きな影響を受けた。

 現在このトラック島は沈船ダイビングの名所となっており、原爆ドームのような負の遺産としてではなく、遊びとしての見世物となっている現状はおかしいと思うし、依然として遺骨が残る状態なのでしっかりとした対応をすべきと思われる。

 

・戦時死亡宣告について

 戦時死亡宣告とは敗戦後に旧満州や中国、南方などから引き揚げた軍人軍属と民間人は計約630万人にのぼり、混乱の中、消息不明の人が数多く残された。1959年、7年間以上生死不明の未帰還者に「戦時死亡宣告」ができる特別措置法が成立。厚生労働省社会・援護局によれば、2万583人が宣告を受けた。

 実際は戦時死亡宣告は取り消し可能で、2006年にも樺太(サハリン)の日本陸軍部隊に所属し、終戦間際の混乱で消息不明となっていた洋野町出身の男性(83)が、ウクライナで生存していることがわかり、取り消された。

 また、「恥ずかしながら帰って参りました」という名言で有名な横井庄一さん(1945年に戦死したとされ、1972年に帰国)や小野田寛郎さん(戦時死亡宣告により死亡扱い、1974年に帰国)という人もいる。

 生きての帰還は叶わなかったが、小塚金七さん(1947年と1959年に死亡宣告)は1972年10月19日に起きたフィリピン警察軍との銃撃戦で肩を撃たれて三八式歩兵銃を落とし、さらに胸を撃たれて倒れる。小野田は小塚の銃で5発、自身が持つ九九式短小銃で4発撃ち警察軍の攻撃を抑え、倒れた小塚を揺さぶるもその時には白目を向いて口から血を流しており既に死亡という最期を迎えた。この時の戦友が先に述べた小野田寛郎さんである。

 

 

 
感想

 今回の「相棒 劇場版Ⅳ」は試写会でも好評で相棒シリーズの映画の中では最高得点だったらしい。個人的な感想としても、今回の相棒の劇場版はかなりテンポもよく話が進み、相棒ファンとしては一度は体験したことがあるはずの、序盤でだいたい犯人がなんとなくわかり、少し話が進んだ時に、あれ?もしかして犯人じゃなくてこの人も殺される?となりながらもやっぱりこいつ犯人か~となる展開でなかなか満足できた。

 相棒シリーズでは社会問題を取り上げることでも有名である。(取り上げるどころかドラマで放送した直前に似たような事件が起こっていて脚本家は予言でもしたのかと思うドラマ上の事件も何件かあったが)劇場版Ⅳではテーマとして「戦争」「テロ」「愛国心」があると思った。映画のキャッチコピーには「追い詰めるのは真実の愛」とありこれは戦争によって親を失った天谷克則は1959年の戦時死亡宣告で国を失った(実際は取り消し可能)つまり国に捨てられたという認識になる。しかしながらも、日本という国にテロの脅威ということを知らせるため、警告するために自らを捨てた国に対して自らを犠牲にしてまでも伝えようとするその姿勢は愛国心以外の何物でもないだろうし、これぞ真実の愛といったことであろう。

 また、閣僚クラスの話し合いで描かれていた「国家を一つの体と例えるならば我々は頭脳だ。手足が怪我をするのは致し方ないだろう」といった文言があった。この一言は今後の起こりうるであろう問題を考えるときに大変重要であり、相棒劇場版Ⅳというものを通しての我々への投げかけであると考えられる。テロに関して言えば、事実ISISによって日本人ジャーナリストが殺される事件が起こっている。(これに対してもジャーナリストは行くのが悪い自己責任だという論調も存在するが今回はそれを考慮しない)このような事件の時に、「テロには断固戦う」という姿勢を見せるということは「表向き手段で人質を取り返すことを断つ」ということを表し、「人質を見捨てた」という認識にもなる。(このことは相棒の劇場版1作目でしっかりと描かれている)また、日本の歩む方向が誤ってしまえば、頭脳も入っているように思われるが、他人の身体を守るために手足の怪我は仕方がないという方向に進んでしまうこともあるのではないかと考えてしまう。今作の劇場版Ⅳでも頭脳を守るためというよりは身だしなみを保つために手足の怪我を見ないことにしたといったようなものでもある。日本が本当に守りたいものは、日本なのか。世界に対するメンツなのか。特定の国なのか。その点をしっかり考える必要があるだろう。

 登場人物については、米沢さんがもう少し出てきてほしかったな……と思うとともに神戸くんと冠城くんの絡みも見れて現相棒が歴代相棒と絡むシーンは大変うれしかった。それと、幸子さんの登場シーン、イタミンがUSBを手に取ったあとの「あ、これはやばい。やっちゃったかー」となるところ、警備を強化すると話し合っている場面で冠城くんが録画を始めた直後に内村刑事部長が「中園は知らんが」といったような場面は緊迫したシーンの中でも面白さというものがあり、各キャラそれぞれ特徴的なところが見れてファンも嬉しいし、鑑賞者の心の癒しともなっていた。

 また鷺沢瑛里佳役である山口まゆが未だ16歳(撮影時は15歳)であることに驚かされた。設定では17歳の役であり、あんまり年齢も気にならず無意識のうちに二十歳前程度かと思っていたからまさか設定より2歳(撮影時)も年下だとは……。

 今回の「相棒 劇場版Ⅳ」は日本の立場や日本の危うさをしっかりと描かれた作品であり、かなり見ごたえがあった。キャッチコピーである真実の愛というものを家族愛としてとらえてこの映画を鑑賞することもいいと思う。本当の親なくして育った天谷克則と鷺沢瑛里佳の関係やともに思う心はただの家族愛を超えるものが存在する。だからまだ見ていないという人は自分なりの見方で楽しんでもらいたいし、1度見たという人は今度は別の見方で鑑賞するということも試してほしい。また、特命係のセットに仕掛けられたイタズラというものも確認してほしい。


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