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映画:「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」感想。「本当の愛国心とはなんだろうか?」

投稿日:2017年1月10日 更新日:

 去年は9月~12月の4か月で17本映画を見るという趣味映画といっても過言ではないほどの映画通いをしていました。

 週1映画、今年も続けたい。

 「シン・ゴジラ」「この世界の片隅に」「聲の形」と1度では飽き足らず何度も見に行ってしまう映画が何本もあり、近年まれにみる映画豊作の年といえたでしょう。

 そんな中、年も変わり今年一本目の映画はドイツ制作映画「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」からスタートしました。

 今作品はドイツ映画賞最多6部門(作品、監督、脚本、助演男優、美術、衣装)受賞

 おそらく人生初のドイツ映画。戦後ドイツから見た戦後世界はどのように見えていたのか、勉強不足が甚だしかったため復習を兼ねてまとめていってみよう。

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あらすじ

 執務室を一歩出れば敵だらけ

 1950年代後半のドイツ・フランクフルト。ナチス戦犯の告発に執念を燃やす検事長フリッツ・バウアーのもとに逃亡中のナチス親衛隊中佐・アイヒマン潜伏に関する手紙が届く。アイヒマンの罪をドイツの法廷で裁くため、国家反逆罪に問われかねない危険も顧みず、その極秘情報をモサド(イスラエル諜報特務庁)に提供する。しかしドイツ国内に巣食うナチス残党による妨害や圧力にさらされたバウアーは、孤立無援の苦闘を強いられていくのだった……。

 

登場人物

・フリッツ・バウアー(ブルクハルト・クラウスナー)

 アイヒマン逮捕に向けて奔走するユダヤ人検事長。

 1968年没

 1936年から1949年までデンマークとスウェーデンで亡命生活を行った。

 ドイツ人の中でも、超有名人というわけではなく、知る人ぞ知る。という人らしい(監督談

 日本人からしたらインド人のパール判事に対する認識と同じようなものだろうか?

 

・カール・アンガーマン(ロナルト・ツェアフェルト)

 今作オリジナルの若手検事。

 フリッツ・バウアーの部下という立ち位置

 女性と結婚はしているが、同性愛者である。

 

・スタッフ等

原題「Der Staat gegen Fritz Bauer」(直訳:国家対フリッツ・バウアー)

監督脚本:ラース・クラウメ

脚本:オリビエ・グエズ


 

「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」公式サイト

 

まとめ

 第二次世界大戦でドイツ敗戦後、ナチス残党が海外逃亡をした。その中の一人が今回題名にもなっている「アドルフ・アイヒマン」

 アドルフ・アイヒマンはホロコーストに関与し、数百万の人々を強制収容所へ移送するにあたって指揮的役割を担った人物である。

 そしてナチス残党の告発に執念を燃やすフリッツ・バウアー検事長(今作の主人公)のもとにアルゼンチンからアイヒマンが潜伏していると書かれた手紙が届く。

 アイヒマンをドイツ国内で裁くことを願うバウアーであるが、ドイツ国内にはナチス残党が沢山存在しアイヒマンを捕まえないようにしようとする勢力が存在する。ソ連とアメリカの関係に巻き込まれている世界で敗戦国ドイツはアメリカの圧力も存在していた。

 アイヒマン拘束、裁判のためにイスラエルの諜報モサドに情報を流すが不十分として協力してもらえず。

 ナチス残党の目をかいくぐり信頼のある部下との協力から情報を得てから2度目のモサドへ接触。

 そしてアイヒマンはイスラエルによって拘束かれるが……。

 

 
感想

 「海賊とよばれた男」では親日であったイラン政権で石油輸入が開始されてからアメリカCIAによって政権が倒された。

 今回の「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」では、ドイツからイスラエルへの武器輸出をアメリカが主導し、アイヒマンをイスラエルで処罰させた。(おそらくモサドが誘拐する以前にドイツもアメリカもアイヒマンの居場所は知っていただろう)

 そしてどちらも根底にあるものは資本主義と社会主義の戦い、具体的に言えばアメリカVSソ連。戦後はこの2国がかかわっていない事件は皆無と言っていいだろう。200近くある国はすべて分断され、敗戦国は属国になる未来しか待っていなかったのだ。

 「海賊とよばれた男」では「日本VS外資」+「政治勢力アメリカ、イギリス」という構図で、日本人企業が外資に吸収されていく、しかし国岡商店はイランからの石油輸入にこぎつけたという話であった。

 今作では、「ナチス残党の権力を持ったドイツ人VSユダヤ人、ドイツ人」+「政治勢力アメリカ、イスラエル、ソ連」といった構図となっている。

 アイヒマンが捕まってしまえばナチス残党の政治関係者や企業関係者が芋づる式に捕まっていき、そうなればアメリカが損してしまうためにアメリカも手出しをしない。イスラエルはドイツからの武器輸入を頓挫させたくない、そしてちらつく社会主義の影。もうヨーロッパぎくしゃくしすぎ!!

 また、アイヒマンはホロコーストの指揮官として処刑された。ならばなぜ、原爆投下を命じたトルーマン大統領以下それに関わったものは処罰されないのだろうか。また個人的怨恨によって戦犯などと言って虐殺を繰り返したマッカーサーは処罰されないのだろうか?

 それと、登場人物たちのゲイ描写は何かの意味があるのだろうか?調べてみると1994年までドイツでは男性同性愛に関しては処罰が課されていた(刑法175条)。しかし、今作の主題とは直接関係ないように思われる。LGBTに対する配慮といったところなのだろうか?

 アイヒマン裁判及びフランクフルト・アウシュビッツ裁判について知識があれば、より一層理解が深まる作品であろう。雀の涙ほどしか得ていなかった知識は、「こういう心理だから虐殺が起こったんだ!」「とりあえずこの人が首謀者」と視点が戦勝国に偏りすぎていてこの映画について完璧に理解ができたとは言えないものであった。だが、日本の現状と同様に、視点が変われば見える景色が変わるものなのだ。日本の教育にもこのことが言える。

 ドイツ映画で上映劇場も少ないが、ぜひ一度この映画を見て、大東亜戦争と共に起こっていた第二次世界大戦のヨーロッパ側を覗いてみてはどうだろうか?


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