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『ちょっと今から仕事やめてくる』感想・原作との相違点「社会に不安がある若者は、涙なしには見られない作品」

投稿日:2017年6月1日 更新日:

3週間ぶりの映画となった『ちょっと今から仕事やめてくる』

この作品を知った経緯としては、やっぱり題名であろう。

趣味の中に映画も含まれているので、ミニシアターまで完全に網羅はしていないが、基本的に公開される作品はチェックしている。その過程でこの題名『ちょっと今から仕事やめてくる』は惹きつけられた。

社会に対し懐疑心を持ち、不安を抱き、生きることに希望を持っていない、そんな現代の若者を象徴したような性格をしている自分に(それが行き過ぎてニート生活をしてしまっているが。というか、この性格が現代の日本を象徴している時点でもうだめだろ。南無)この題名の映画を見に行かない以外の選択肢はなかった。

さぁ。過去にも題名にインパクトやこれっぽい作品は何作かあったが(何とかバレーや、部活やめるってよみたいな)この作品はそれ以上のインパクトがあるだろう。そのインパクトがこの作品のストーリーにどのように絡んでいっているのか。この作品への評価はどういったものなのか。また、作中に出てきたものの一部を紹介したり、原作小説との相違点を示していく。

感想・原作との相違点にはネタバレの内容も含まれているので注意(その部分は隠しており、【さらに読む】を押して見てください) 

 

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あらすじ

ブラック企業で働く青山隆(工藤阿須加)は、疲労のあまり駅のホームで意識を失い、危うく電車に跳ねられそうになってしまう。
すんでのところで青山を救ったのは、幼馴染みのヤマモト(福士蒼汰)と名乗る男。だが、青山には彼の記憶がまったく無かった―
大阪弁でいつでも爽やかな笑顔をみせる謎の男、ヤマモトと出会ってからというもの、青山は本来の明るさを取り戻し、仕事の成績も次第に上がってゆく。
そんなある日、青山がヤマモトについて調べると、何と3年前に自殺していたことが分かる。
それではヤマモトと名乗る、あの男は一体何者なのか?

その真実が明らかになるラストに、誰もが涙する感動の物語。

登場人物

・青山隆 (工藤阿須加)

ブラック企業で働くサラリーマン。
生真面目な性格が災いしてか、営業成績が上がらず、いつも部長の山上に怒鳴られている。幼馴染のヤマモトと出会ってからは気分も一新し、仕事も順調に進んでいくのだが…

 

・ヤマモト (福士蒼汰)

大阪弁でいつもアロハシャツを着ている謎の男。
駅のホームで青山と偶然出会い、小学校時代の同級生だと名乗る。仕事で行き詰っている青山にとっては、的確な助言をしてくれる得難き友人になっていく。その明るい笑顔の裏に、実は大きな秘密を抱えている。

 

・五十嵐美紀 (黒木華)

青山の憧れの先輩社員
社内のエース的存在で、常にトップの成績を求められることにプレッシャーを感じている。しかし、その苦悩を他人に見せることはない

 

・山上守 (吉田鋼太郎)

青山の上司で営業部部長
過酷なノルマを課し、常にプレッシャーをかけ続け、成績の悪い部下を容赦なく怒鳴り散らす。現在の一番のターゲットは青山。

 

相関図やその他のキャラクター詳細については【こちら】(→消滅)

・スタッフ

原作:北川恵海
監督・脚本:成島出
主題歌:コブクロ『心』


 

「ちょっと今から仕事やめてくる」公式サイト(消滅?)

「ちょっと今から仕事やめてくる」公式Twitter


原作との相違点

原作と映画では大から小まで様々な変更点が存在していた。

原作は読んだけど映画はどうしようかな、映画は見たけど原作はどうしようかな。と思っている人たちの参考になればと思い、その原作との変更点の一部をここに示そうと思う。

※以下一部ネタバレあり

五十嵐先輩の性別

映画では、青山の先輩である五十嵐先輩は五十嵐美紀と、女性上司であった。

しかし、原作では、五十嵐先輩は男性上司であったのだ。

何も考えずに原作を読んでいっていると、初登場シーンでは青山が尊敬している先輩という印象を受け、性別まで言及されている描写はなかったが(口調がかなりサバサバしており、女性にしては乱暴な言い方だなと印象は受ける程度)、2回目の登場シーンでは五十嵐先輩の一人称が『俺』であったのだ。

もう一度読み直したよね、これ。自分の解釈が間違っていなかったのだろうかって。

おそらく、この変更は映画化にあたって仕方ないものなのではないかと思われる。

原作を読めば、女性が出てくるシーンが親しかなく、全体として95%以上男だけで物語が進んでいくのだ。さすがに映画化にあたって完全に男だけの世界を描くのは、海賊とよばれた男のように時代を描く(あの作品は会社としての女性の登場シーンはないが、家としての登場シーンはある)といった譲れない信条があるのでなければ、彼女がいない一人暮らしの主人公と、その男友達ヤマモトでは華がないからであろう。さすがに、映画に女性キャラが一人もまともに出てこないとなると色物みたさでくる人が釣れなくなる。

あともう一つ考えられるのは(こちらの方は前者のような理由ではなくもっとややこしく鬱陶しいものだが)、フェミニスト達への配慮といったところだろう。フェミニストたちは男女平等(女尊男卑?)を推し進めており、社会の中における女性の立場というものを男性同等(以上)にし、なおかつ面倒ごとはすべて男性に押し付けようと活動している。そのような団体、組織において、会社の中に女性が存在しないということは大変由々しき事態であり、顔が真っ赤になって怒る事態なのである。そこで、そのような創作活動において様々な障害をもたらしてしまう団体の配慮ということで原作では下の名前が存在していなかった五十嵐先輩にその鬱陶しさを押し付けたということだろう。(下手に同僚を女性にするだけではその団体は女性は出世がーなど騒ぐため)

このような2点によって今回の変更は行われたと思われる。まぁ、後者の理由は置いておくとして、前者の理由のみでもこの変更は仕方ないものと思われるし、改悪とは思わない。

シンゴジラなど最近は恋愛要素が映画内で描かれない作品も出ており、今作もその恋愛要素が描かれない作品であった。女性キャラをだし、恋愛要素を描くということをしてしまえばそれは改悪であり、世界観が壊れてしまうが、そうではなく、様々な団体への配慮にもなるのでいい変更であった。

 

青山の親の登場頻度

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ヤマモトの家族

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最終結末

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社訓

  1. 不平不満を言わない社員になれ。
     ――じっと我慢し謙虚に受け止めよう。
  2. 自己管理を怠らない社員になれ。
     ――熱があろうと這ってでも出勤すべし。
  3. 遅刻は十分で千円の罰金。
  4. 有給なんていらない。体がなまるから。
  5. 言われなくてもできる社員になれ。
     ――効率を上げるため行動は迅速に。
  6. やる気旺盛な社員になれ。
     ――仕事の後も自分の課題解消に真剣に取り組め。
  7. 常に難しい仕事を狙う社員になれ。
     ――向上心を止めるな。成功してもまだまだと思え。
  8. やる気があるなら「はい」の二つ返事で仕事しろ。
  9. 上司の指示は神の指示。
  10. 心なんか捨てろ、折れる心がなければ耐えられる

お、おぉ……ブラック企業の社訓やばい……

この社訓の中でまだましなものって5番目と7番目くらい?これをましと思ってしまう時点でもう日本の社会の闇に毒されているってことはないよね?

あと太字部分のみなら2番と6番も大丈夫だとは思う。ただ、その後に続く言葉は完全アウト。

この中で労基に駆け込めるのって3,4,9,10番の社訓かな?これはもう訴えていい。

 

一週間の歌

映画始まってすぐに流れたこの一週間の歌。ラップ調でサラリーマンに大人気と紹介されており、この『ちょっと今から仕事やめてくる』という題名に惹かれて見に行った自分はその歌詞を聞いておぉ!ほんとこれだよ!題名だけで釣ったという感じじゃないんだな!と思った。また、この歌詞が本当にいい!激しく同意します!

原作ではこの歌詞は主人公である青山隆が自分で作詞したこととなっている。以下、その超有名でCD発売されたら買おうと思っている一週間の歌の歌詞を示す。(原作小説P.45)

月曜日の朝は、死にたくなる。

火曜日の朝は、何も考えたくない。

水曜日の朝は、一番しんどい。

木曜日の朝は、少し楽になる。

金曜日の朝は、少し嬉しい。

土曜日の朝は、一番幸せ。

日曜日の朝は、少し幸せ。でも、明日のことを思うと一転、憂鬱。以下、ループ

いやぁ、本当にいい歌詞だ。

個人的に木曜日が一番しんどかった気がするけどまぁそこは人それぞれだろうな。

 
感想

簡潔に言おう。この作品は☆4.5(2度目の視聴、BD購入検討レベル)である。

今作品は性別よりも視聴する世代によって感想が全く異なってくる作品であると思う。

17、8歳~29歳あたりの、就職に悩み社会に対する不安を抱く世代。そして主人公と同様に働き始めたばっかりの人から2,3年目の人、最後に働き始めてからある程度年を経て後輩ができてきた人。3パターンとも立場は違い、感想は多少異なるだろうが、この世代が一番この作品に対して感動を覚えて涙するはずだ。

一方、今回の部長世代(40後半)や、主婦層はこの作品への感想がどんなものか気になる。ゆとり世代は!これだから若者は!と感じるのだろうか?この作品を通しての、若者たちの叫びはその世代に伝わることはないのだろうか。

一応そのような世代のためにも親の描写は多く取り入れられており、そこで共感することは可能であろう。

次に今作について。

この作品で描かれているブラックさは原作小説以上のものになっている。

特に、部長からのパワハラは本当にこっちが心苦しくなってくるもので、もし、自分が青山の立場であったら物語中盤部分で速攻会社を辞めていたと思うほどである。

予告編で見た人も多いだろうが、あの土下座シーンはもう無理です。まじで。耐えられません。

でも、思うんだよ。今の若者ならわかってくれると思うんだけど、あの部長みたいな人っているよね。これまで生きてきて2,3人見てきたよ。本当につらい。ああいう人とかかわらないといけないときって。

※ネタバレ有り感想

さらに読む

映画は月曜日の夕方見たのだが、全体的に女性客が多い印象だった。福士蒼汰という俳優の影響なのかな?俳優は全然知らないのでどれほどの人気かはわからないが、ヤマモトの破天荒な演技はよかったように感じた。

あと、スーツを着た若いサラリーマンと思われる男の人も見に来ていたけど、この映画見た後辞表出しに行かないよね?仕事帰りなのか、営業回りの後時間があったから見に来たのかは知らないけど、この映画みた次の日に仕事とか辞めるって言ってスーツでカバン振り回して横断歩道わたりたくなっちゃうよ。

ちょうど1年ほど前、死にかけていた時にポケモンGOが配信され、外を歩いたら外ってこんなに広かったんだな。と気づかされて、今までしていたことをすべて捨てて、自分に素直に生きることに決めた。それから一年たち、自分は今ぎりぎりのところで辛うじて生きてはいる。一年前に外の広さに気づいたが、今やまた外の広さを忘れてきてしまっていた。この作品を見て、もう少し空を見ようと思った。ポケモンGOで歩いたとき、画面のみならず空も見上げて広さに気づいたのだ。青山とヤマモトと、同じように、この空を見上げ、世界の広さを感じながら生きていこう。

みんなこの映画を見て、一日に一度、空を見上げてみよう。毎日がつらいのだから、毎日見上げる必要がある。


 

 

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